本会は、心臓ペースメーカーによって生命を救われたことを認識し、感謝、報恩、奉仕(ボランティア)の精神に基づいて、会員の適切な健康管理並びに健全快適な日常生活の確保を図り、もって社会福祉の向上に貢献することを目的とする

会報誌「かていてる」より① 



Q.(男性) 私は新聞を見て来させて頂きました。息子が3月20日に突然死を致しました。その原因は突発性不整脈という事でした。今まで、私も息子も特に病気をした事もなく医療に関して本当に無知なので、幼稚な質問になりますがご勘弁願います。事故は自宅で起こりましたので警察医が解剖をした結果、右心室が腫れていて薄いので何か合併症を起こし、手遅れだったんだろうという事でした。私のかかりつけの循環器の先生にその話をしましたら、私も兄弟も一度診て貰った方がいいと言われ、ある病院へ行きましたら、「すぐ2週間ほど入院してペースメーカーを入れなければいけない」と言われ、初めてペースメーカーというものを知りビックリしたような現状です。親戚も皆ビックリしまして、別の病院へ行きましたら、「慌てる事は無い。ボチボチ通院で検査をしてその結果にすれば良い」と言われ、その予約の日が来月になっています。心配していたところに、新聞でこの会があることを知りまして寄せて頂きました。質問は、私は68歳までどこも悪く無く来ていて、突然ペースメーカーを入れて副作用が起こらないかと素人考えで心配しているのが一つと、次男がおりまして、矢張り早急に検査をしないといけないのかの2点お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

A.ワーファリンを心房細動の方に服んでもらうかどうか、近頃は服まさないドクターが多いと思います。それに代わる、血小板を抑制する、アスピリン系統の薬を使っている方が多いんじゃないかと思いますが、内科の先生どうですか? (顧問医師C

Q.血圧は高くて140ぐらいです。鼻血はただ単にワーファリンを服んでいるために止まらなかっただけだと言われました。傷が残っていてきれいに治っていないそうです。ワーファリンを再開し出したらやっぱり鼻血が出ました。

A.それで、ホルターの結果がどうだったかは分からないんですか? (顧問医師C)

Q.別にどうもなかったようで、それで2週間入院してもっと精密に詳しく調べようという事なのか、はっきり言ってくれれば安心するんですが、ペースメーカーを殆ど入れなければいけないような早急的な事を言われました。

A.真剣にお答えしたいと思いますが、情報が余りに沢山ありませんので、想像が混じる事になると思います。先ず、ご子息が突然お亡くなりになられたという事は大変びっくりなさった不幸な事ですが、何万人という大勢の人で見ますと、時々そういう風に突然亡くなられる方が有り、突然死と言われています。高円宮様が運動中になられたのもそうです。 (顧問医師C

Q.それと同じと言われました。

A.高円宮様が、そちらのご子息に言われた「右心室が拡大していて薄い」というのと同じであったかどうかはっきりとは言えないのですが、ただ、普通に心臓が働いている時に心臓がパッと心室細動を起こした時、「心室細動を自動的に取る機械をもし付けておられたら助かっていたかも知れない」という病気がある事が段々分かって来まして、そういう人の中に御子息のように右心室が薄く拡大している人も有ります。そこまで形が変わっていなくても、心臓の中の電気的なリズムが狂いやすい人など色んな場合が有る訳です。そういう場合は心室細動を取る植込式除細動器という機械があり、ペースメーカーより一寸大きめの器械です。皆さんが入れておられる機械はこの除細動器ではなくて、遅いリズムに対して普通のリズムをつくる、つまりペースをつくるペースメーカーです。除細動器は心臓の働きがもっと乱れた状態の心室細動のときに働くのです。高円宮様もお宅のご子息の場合も多分心室細動であったんじゃないかという意味で、「ああ、同じだ」という事になるんですが、その心室細動の来る理由は又幾つかありまして、高円宮さんはサッカーなどをされている方ですが、スカッシュというもっと激しい運動をされていた。ご子息の場合はお家におられて、激しい運動はなさっていなくて突然起こったという事で、元に右心室が拡大していた事が原因であったかも知れません。こういう方が身内におられますと、そのお父さん、お母さん、あるいはご兄弟、ご親戚を実際調べる事は必要だと思います。ひょっとしたら、似たような方が見つかるかも知れない。もしみつかればその方には真剣に何か対策を講ずる必要がある。調べて何ともなければ、対策を講じなくても良いわけです。2点の御質問うちの後の方から先に言いますと、「お父さんや次男の方をもう1回よく調べようじゃないか」というのは必要な事だと思います。受けられて、何とも無いと分かればこれはもう安心ですから、「不安で病院へ行きにくい」と放って置かれる方が遥かに不安だと私は思います。家族性のそういう病気は有り得るんです。調べた結果ご長男お一人のご病気であったという事が分かれば、それはそれで皆さんの気持ちがおちつく訳ですから、是非受けておかれた方が安心です。次に、御質問の方もお元気で大きな病気は無かったということで本当にペースメーカーがいるのか、また入れてから副作用がないかという問題ですね。今日ここに御出席の方は殆どペースメーカーをお持ちの方ですが、前から心臓が悪いと聞いていてペースメーカーが必要になった方と、貴方と同じように元気だけれども突然ペースメーカーが必要な状態になった方が混じっておられると思います。今のお話のように、ぺースメーカーが急に必要になったという方、一寸手を上げて下さい。ざっと1 / 3ぐらいですね。そういう事で、たとえば私が胃がんとか胃潰瘍とかある病気の診断を付けられたとします。それが3年も4年も前から気配があったとは限らないんです。突然言われて初めて「そんな病気が自分にあったのか」と驚くことはどんな場合にも割にある事です。心臓の刺激伝導系が不意に切れてある日突然意識が無くなり倒れて救急車に乗せられてペースメーカーを入れられたという方もチョイチョイ有る分けです。今手を上げられた様に、兎に角お元気であって尚且つこういう状態になったという方が1 / 3おられる。これは是非覚えておいて頂きたいですね。言い出した医者が凄く悪役になると思います。もう一人の先生が「慌てずにしばらく通院して 6 月に検査をしよう」と言われていますが、貴方が最初にその先生に行かれたとしたら、それはそれで「エーッ、6月に検査を受けるとはえらい事だ」と思われると思います。 (顧問医師C

Q.どちらを選択するべきか。

A.どちらか即断できないですね。24時間ホルター心電図とかレントゲンを撮る、エコーを撮る、そういう事をやってみれば分かるんですが、それをいつからかかるか、ですね。それを私が引き受けるとしたら早くやりたいですね。お家のご都合で6月になったら受けますと言われるなら、妥協してそうなるでしょう。まあ、ご子息に起こった事がすぐ皆に起こるとは限りませんから「多分、大丈夫だろう」という感じはしますけれど、早く知りたいという点では同じですね。とにかくペースメーカーを入れようという事を前提に調べるというのでは無いと思います。 (顧問医師C

Q.そうですか。それを聞いて一寸安心しました。

A.ご子息にペースメーカーが入っていたら助かっていたかどうか、これは疑問です。心室細動による突然死というタイプであったら、除細動器が植え込まれていたら助かった。ペースメーカーではダメですね。現在では除細動器はペースメーカーと組み合わさっています。 (顧問医師C)

Q.それは組み合わせたものを入れるかどうかは検査をしないと分からない訳ですか?

A.そうです。 (顧問医師C)

Q.そうですか。それと、さっき大した病気も無く元気であった人がペースメーカーを入れられた方が沢山おられましたが、ペースメーカーを入れてから副作用だとか薬を服まないといけなくなるような事はないのですか?

A.ペースメーカーが入ったから薬が必要になるという事はあまり無いと思います。ペースメーカーが必要な心臓の中に、時々薬を服んだ方が上手く行く場合は有り得るんです。けれど、ペースメーカーを入れたから薬を服むという事は無いと思います。それから、今までお元気だったけれど、急にある日から病気になりペースメーカーが入ったという3分の1ほどの手を上げられた方は何も無くてそのまま入れられたのではなく、何か症状が起こったんです。それでおかしいと思って病院へ行かれたんです。 (顧問医師C)

Q.私は現在何も起こっていないんです。

A.はい、ですから、24時間のホルターで調べても異常は見つからなかったのです。しかし検査をしたその1日は良かったと言えるだけで、あくる日はどうかは簡単には言えない。何かが見つかったら「知らない間にこんな事が起こっていた。これからも起こるぞ」という事は言えます。無いから良いとは一寸言い切れないのでよく調べる必要がある。何か症状があって、救急車で運ばれた方はペースメーカーを入れたら「これで助かった」という喜びが大きいのですが、一寸ドキドキするぐらいであまり深刻に思っておられない時に、医者が「これは入れなければいかん」と症状を予防するために先回りして入れる事があります。そういう時はよく入れた所に違和感があるとか、却って悪くなったような迷いが来るんです。相当症状が出てからペースメーカーでパッと良くなった方は皆感謝の気持ちが出て来るんですけれど、早めにやりますとあまり喜んで貰えないのが実情です。「こうなったらいけないからこうするんですよ」とか「そのためにしばらくは一寸不自由ですよ」と十分説明をするんですが…。(顧問医師C)

A.私は大阪府の三島救命救急センターにおりまして、救急を専門にしておりますので心停止の話を中心にさせて頂きます。三島地区だけで年間150人の方が心臓が止まって運ばれてみえます。一回止まってしまったら、よくなって歩いて帰られる方は一人か二人しかおられません。心室細動というのは早く処置をしたら助かりますが、10分経って処置をしたんでは殆ど助からない。だから、その症状が出てからでは手遅れの場合が多く、出る前に手を打たないとダメな病気です。心臓が止まってしまいますと、ブロックで徐脈の方とか、フーッとなって倒れた方とかいうよりもっと激しいもので、高円宮さんはたった 1 回の心室細動で亡くなっている訳です。だから、その 1 回を防ぐ為に入れる器械が除細動器なんです。実際にアメリカのチェイニー副大統領は1回も発作を起こしていないのに植え込み型除細動器を入れています。一寸ペースメーカーとは意味合いが違う面があります。だから、色々詳しい検査をされて可能性があれば植え込み型除細動器を勧められると思います。今まで元気だったからという事で、次の瞬間元気かどうか保証が無い場合を考えて行く器械なんですね。ペースメーカーを入れている皆さんがフラッとしたとか、意識が無くなって戻ったとかの症状とは全然違うんです。大阪府では年間数千人の人が自宅で突然心臓が止まるというデータが出ています。こんな調査は世界でも少ないんですが、全国に先駆けて大阪がそのデータを出しています。ほぼ2年の間に6000人ぐらいの方が、病院ではなくて家で突然亡くなられた。その内の7割前後が心室細動の状態で亡くなられているだろうと想像されています。残念ながら救急車が駆けつけて心電図をつけた時にはもう手遅れの状態の方が多いですね。その時間を短くしようという事で病院の外でも除細動器で一寸でも助けてあげようと僕らは今努力している訳です。この前の勉強会で心肺蘇生法をやりましたが、心肺蘇生法で心臓マッサージをして時間を稼いで頂ければ除細動が効いて回復して、歩いて帰れる可能性が出てくる。日本人の一番悪い習慣ですが、「人が倒れたら触るな」と言います。それは間違いです。貴方が心臓マッサージ、人工呼吸をしてあげなければその人はそのままあの世へ行ってしまいます。そこで倒れた人に手当てをしてあげて初めて戻ってくる訳です。「触るな」ではなく、手を差し伸べてあげて心臓マッサージをしてあげて下さい。日本では失敗したらどうしよう、と先ず一歩引きますがそこが間違いで、貴方が手を差し伸べてあげなければそのままあの世へ行ってしまうという事を思い出して、是非何か手助けをしてあげて下さい。 (顧問医師D

Q.息子の場合も昼でしたから、救急車を呼んだ時に私はいませんでした。家内と息子の嫁が救急車を呼んで電話で話をしながら「こうしなさい」と言われて、息を入れたりしたら喉がゴロゴロッと鳴ったそうで、「助かった」と思っていたら案外早く救急車が来て、直ぐに手当てをして貰ったのですが、病院へ行った時はダメだったと聞きました。救急車に救急救命士が 大阪市 は全部乗っておられますか?

A.大阪市 は全部乗っています。大阪府は7割から8割乗っています。全国ではまだ半分ぐらいしか乗っていません。 (顧問医師D)

Q.電気ショックを与えるような事もその時してくれていたんでしょうか?

A.それは分かりません。そのショックをかけていいかどうかは今器械が判断するようになっています。発症後の初期だったらショックが有効だけれど、時間が経ってくるとショックをかけても無駄という状態になります。今までは救急車から電話をかけて病院の先生に除細動の指示をもらうのに4~5分も時間を無駄にしていました。今年の4月から、電話をかけている時間がもったいないから早く除細動をしてもよと言う事になりました。この器械は、欧米では空港や飛行機の中にも置いています。日本も徐々に進んで行くだろうと期待しています。ここにある「AED」という器械がそれで、植え込み型の器械と違って、民間人が使っても自動的に器械が除細動をしてくれるものです。消火器のように町の色んな所に置いておけば良いのです。心肺蘇生法もそうですが、日本もこれから皆さんの力で器械の普及を進めて行かなければなりません。まだ、これからの課題です。 (顧問医師D

Q.どうも有り難うございました。私一人の為に貴重な時間をお取りし申し訳ございません。